004 The Long and Winding Road       ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード


音楽聴きくらべタイトル
課題曲

#004 The Long and Winding Road

ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード

THE BEATLES
PAUL McCARTNEY

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マネージャーであるブライアン・エプスタインの死後、
「Apple」の経営を巡りグループ内の不和・ゴタゴタが加速し、
ビートルズとしてのグループ存続が危機的状況の中、発表されたのが、
このアルバム「Let it Be」である。
(断っておくが、ここで云う「Apple」とは、スティーブ・ジョブズ率いるアップル・コンピュータのことではない。1968年にビートルズが設立した、アップル・コアの一プロジェクト、つまりレコード会社である。)
当初、アルバム・タイトルは、彼らのゴタゴタ解消を願い「原点に戻る」という意味合いから
「Get Back」を予定していたが、当時の諸々の状況、事情から制作は意図通りには運ばず、延期を余儀なくされることとなる。
ところが、最終的に落ち着き、リリースに至ったアルバムタイトルは「Let it Be」だった。
残念ながらバラバラになったグループ一人一人の心が再び一つになることはなかったのだ。
そのとき、プロデュースを手掛けたのが、当時注目されていたフィル・スペクターだ。

今回採り上げるのは、このようなビートルズ混乱期のグループ末期に作られたアルバム「Let it Be」の中に収録されている名曲
「The Long and Winding Road」だ。

当時、私の周りには熱狂的なビートルズファン(オタク的)が多かったが、彼らの会話はいつも決まって、ビートルズに関する自慢話だった。
私自身はそれ程でもなかったが、「ガール」や「エリナー・リグビー」など大好きな曲もいくつかあった。
その中で、「The Long and Winding Road」は最高にお気に入りのナンバーだった。

しかし、CDのライナーノーツを読むと以下のような意外なことが書かれていて驚かされる。
知っての通り「The Long and Winding Road」はポールの作品で、彼自身も大変お気に入りの一曲。
それは彼がウイングス結成後もこの曲をレパートリーに加えていたことからも推察できるのだが、
そのオリジナルのテイクにオーケストラとコーラスを加えたことに、当時のポールは大いに憤慨したとのことである。この場合誤解してはいけないのは、ポールがヴァイオリンやコーラスを絶対的に嫌ったのではなく、この曲のケースに限って、それらは必要ないと判断したことである。
現在、「Let it Be」のアルバムで聴けるのはオーケストラとコーラスの入ったナンバーの方だ。

当時、こうした逸話を知らずにこの名曲を聴いてしまった我々(少なくとも私)には、
オーケストラとコーラスの入っていない「The Long and Winding Road」は今更考えられない。
恐らく、物足りなさを感じるだけだろう。
以前から、この曲にはある種のドラマ性があると思っていた。
それは例えば、登山家が苦難を乗り越え、目的の山頂に辿り着いたときに、
下界を振り返りながらそれまでの道のりを回想するような、そんなストーリー性を思い浮かべてしまうからだ。
その意味で、映画などのエンディングには最適なナンバーではないかと思う。
この曲が持つこうしたエンディング性、ストーリー性、スケールの大きさを表現するには、
やはりオーケストラとコーラスが必要だと凡人の私は思う。
自分の作品を勝手にアレンジされるという作曲家としての屈辱感や、
これまでのポールの音楽性を考えると彼の立場もまったく理解できない訳ではないが、
この場合、アーチストであるポールにではなく、
プロデューサーのフィル・スペクターに肩入れしたい。

この当時のビートルズの各メンバー、及びそれを取り巻くステークホルダたちの確執は尋常ではなかった。
そのことを考えると、この問題も「The Long and Winding Road」のテイクアレンジ云々というよりは、
ポールとフィル・スペクターとの人間関係のトラブルに端を発したゴタゴタだったのかも知れない。
何れにしても、グループ解散の危機的状況の中、
原点に戻ろうという「Get Back」の動きと、修復不可能という諦めの境地「Let it Be」の静観姿勢とが共存していて、最悪の事態を回避しようという計らいが、僅かながらもそこにはあったのだろう。
だが、皮肉にも「Let it Be」という機運の方が勝り、この後歴史はグループ解散という最悪のログを残すこととなる。

そして、グループが辿ったこれまでの道程はまさしく「The Long and Winding Road」だったという回想と伴に象徴的なタイトルに繋がっていくのか。
そんな意味深なストーリーを考えてしまうのは、あまりに飛躍し過ぎなのだろうか。
この「The Long and Winding Road」という曲は、
たとえ、この曲の背景にこうしたゴタゴタがあったとしても、名曲であることに変わりはない。
否、そうした不運な背景があったからこそ、心惹かれる魅力的な名曲になったのかも知れない。

今回紹介するビートルズを除く二人の女性ボーカル、ナンシー・ウィルソンとオリビア・ニュートン・ジョン。
それぞれジャズとポップスというジャンルは異なるものの、この名曲の持ち味を壊すことなく、自分自身の個性を充分に発揮してこの曲をシットリと歌い上げている。
ビートルズの出来栄えについては、ここで改めて言及するまでもないだろう。

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<収録アルバム紹介>

ビートルズ LET IT BE
THE BEATLES LET IT BE

LET IT BE (1970年)

CP32-5333
ビートルズ「The Long and Winding Road」
演奏時間 3:38

一旦は「原点に戻る」という意図のもと、再起を願って制作がスタートしたアルバムだったが、メンバー全員がアルバム制作を放棄という皮肉な結果になってしまった、ある意味悲劇的なアルバム。

フィル・スペクターによるマスター・テープの再プロデュースの如何を今更云々してもどうにもならないが、芸術作品とは、人間の確執とは、そしてこの二つの関係がもたらすものなど、いろいろと考えさせられるアルバムである。
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Nancy Wilson ナンシー・ウィルソン
Nancy Wilson

NANCY WILSON (1988年)
CP20-5703・4
ナンシー・ウィルソン「The Long and Winding Road」
演奏時間 3:34

但し、収録アルバムは異なります。
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EMIの90周年特別企画としてリリースされたナンシー・ウィルソンのそれまでの40曲を収めた2枚組ベスト・アルバム。

どちらかと言えば、ジャズ・ボーカルとしてカテゴライズされるナンシーだが、ポップス系のナンバーも積極的に歌っていた。

このアルバムはポップス系のナンバーを集めているが、この「The Long and Winding Road」は特にジャズ風で、自由自在に伸び伸びと熱唱している。

このアルバムには「The Greatest Performance of My Life」というドラマチックなナンバーも含まれていて注目である。
元々は1971年に発表されたアルバム「カレイドスコープ」のなかの一曲。

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オリヴィア・ニュートン・ジョン
Olivia Long and winding road

COME ON OVER「水の中の妖精」
(1976年)
オリビア・ニュートン・ジョン「The Long and Winding Road」
演奏時間 4:28

当時、勿論レコードでの発売だったが、このレコードジャケットを初めて見たときの衝撃は、半端ではなかった。
それまでオリビア・ニュートン・ジョンのファンではなかった私でも、このアルバムを買う気になったのだから・・・

こうしたアルバムジャケットのデザインを見ていると、改めてLPレコードサイズのジャケットが懐かしく、貴重だったと思う。

デビュー以来のアイドル的歌手のイメージから大人の女性ボーカルとして大きく転換した時期のアルバムである。

Viva! the Arts