課題曲
#001 「The Windmills of Your Mind 風のささやき(邦題)」
作曲 :Michel Legrand
作詞 :Alan & Marilyn Bergman
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
本来、スティーブ・マックイーン主演の映画「華麗なる賭け」(1968年日本公開)の挿入曲。
映画ではノエル・ハリスン<NOEL HARRISON>が唱っていた。
その難解な詩はAlan & Marilyn Bergmanの二人によるものだが、
詩の内容は直接映画とは関係ないようである。
映画の中で、この曲は主人公トーマス・クラウンがひと時の安らぎを求め、グライダーで大空を飛行しているシーンで流れる。
眼下には広大な緑の草原が広がり、グライダーのスローモーションを思わせる優雅な動きは、
ルグランの流れるようなメロディーラインをなぞるかのように飛行し、とても印象的なシーンである。
歌詞の難解さは、その時の主人公の複雑な心境を投影しているかのようで効果的に使われていた。
当時無名だった歌手ノエル・ハリスンのソフトで響きのある声質も、臨場感を必要とするその場面にはぴったりだったように思う。
映画にとって音楽が如何に必要不可欠かを再確認させられた作品であった。
余談だが、
日本での公開は1968年。
私が高校生の時である。
映画少年だった当時の私は、その頃007シリーズなど比較的ませた映画を観ていた。
それでも、「華麗なる賭け」のフェイ・ダナウェイの魅力を当時の私は理解できなかった。
改めて楽曲の話題に戻ろう。
作曲者ミシェル・ルグラン自身ジャズ畑のアーチストのためか
全体的にこの曲を取り上げるアーチストはジャズ系のアーチストが多いようだ。
というか、楽曲自体、そもそもジャズに適した作品だったのだろう。
<収録アルバム紹介>
The Windmills Of Your Mind ( 風のささやき)
アーチスト:Dusty Springfield
アルバムタイトル:The Best of Dusty Springfields PHCA-4122
Time 3:54
かつて、「この胸のときめきを」が大ヒットしたイギリスの歌手、
ダスティー・スプリングフィールド。
持ち前のハスキーヴォイスがこの曲にぴったり。
icon
今回紹介するアルバムの中では一番古い録音かもしれない。
そのため、アレンジ的には多少古臭さを感じるかもしれないが、曲の展開、盛り上がりといった点では、かなり気に入っている。
この他、彼女はジャック・ブレルの「行かないで」のような、切ない曲調のナンバーを得意としている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Windmills Of Your Mind
アーチスト:Sting
アルバムタイトル:Brand New Day (Japan Edition)
Time 4:16
上のダスティー・スプリングフィールド同様ハスキーヴォイスの
スティング。
やはり、この曲に向いたヴォーカリストの一人であろう。
格好いいジャズ風アレンジは、スティングならではの世界を作り上げている。
この曲を選曲した動機が何となく分かるような気がする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
The Windmills of Your Mind
アーチスト:Michel Legrand
アルバムタイトル:Paris Was Made for Lovers
Time 3:36
作曲者自らの演奏アルバム。
ミシェル・ルグランはこのアルバムではオーケストラをバックに、
チェンバロをフューチャーして、イージーリスニングの一曲として演奏している。
かれのジャズ風演奏も聴いてみたい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
The Windmills Of Your Mind
アーチスト:Laura Fygi
アルバムタイトル:Watch What Happens – When Laula Fygi Meets Michel Legrand
Time 4:06
icon アーバン・シティー・ナイトがよく似合うローラ・フィジー。
曲の冒頭出だしは、映画で流れたノエル・ハリスンのそれを彷彿させるアレンジで一瞬ハッとさせられる。
今回紹介のアルバムではジャズヴォーカリストのものがいくつかあるが、もっとも大人の女性を感じさせる作品かもしれない。
しっとりしたその唱法は彼女の持ち前だが、このアルバムは
サブタイトル通りミッシェル・ルグランの作品集であり
「The Windmills Of Your Mind 」以外にも、聴き応えある彼の作品が目白押しで、ローラ・フィジーがしっとりと見事に謳い上げている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
The Windmills Of Your Mind
アーチスト:European Jazz Trio
アルバムタイトル:The Windmills Of Your Mind
Time 5:12
アート・ファーマーのトランペットをフューチャーした、普段のヨーロピアン・ジャズ・トリオの雰囲気とは違った異色アルバム。
彼らの演奏を聴いていると、この曲が本質的にジャズに適していることを証明してくれているようだ。
アルバムタイトルにもなっていることから、アレンジもかなり凝っていて、聴き応えがある。
アート・ファーマーのトランペットが曲の雰囲気を決定づけ、
尚且つ、それが成功に繋がったナンバーといえよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Windmills of Your Mind
アーチスト:Carla Helmbrecht
アルバムタイトル:Be Kool Be Kind
Time 5:23
このアルバムで初めて知ったアーチストである。
正統派女性ジャズヴォーカリストとして、将来大いに期待したい。
上のローラ・フィジーとはまた一味違った味わいがあり、切々と歌い上げている。
本来この曲は、歌詞の難解さと同じくらい難曲で、ともすると一本調子に陥る危険性を孕んだ曲だが、さすがこの曲を取り上げるアーチストはみな歌が上手い。
ホイットニー・ヒューストンやマライヤ・キャリーの上手さとは別物の歌唱力である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Windmills of Your Mind
アーチスト:Hilary Kole
アルバムタイトル:Haunted Heart
Time 4:40
彼女は本来ジャズヴォーカリストにジャンル分けされるのだろうが、ことこのアルバムのこの曲に関しては、クラシックの歌手のようである。
まるで、アルト歌手がピアノをバックに歌曲を歌っているような歌唱法で、歌詞を噛みしめるように丁寧に歌い上げている。
意識的なのだろうが、その真意はよく判らない。
他の曲は本格的なジャズである。
*なお、アルバムにより曲タイトルに定冠詞「The」があるのと無いのがあるのは、CDの記載に基づいたためである。