憧れの図書館とは

前回は「ツタヤ図書館」について触れたので、今回はわたしが理想とする図書館について述べておきたいと思います。

ハリウッド映画などを観ていると、主人公の学生が図書館で調べ物などをしているシーンを見かけます。

高い天井に歴史を感じさせる重厚な机や本棚たち。
その光景は、一朝一夕では成し得ない伝統と風格が感じられ、わたしは、ただただ憧れてしまいます。

映画「ペリカン文書」より
映画「ペリカン文書」より

そうした公共図書館ほどのスペースは無理としても、個人的には例えばシャーロックホームズのドラマに出てくるような書斎でもいいのですが、欲しいものです。
それもムリですね。

ところで、最近の図書館は最先端の近代建築のテクノロジーを駆使し、機能性を追求した無駄のない建物が目立ちます。
抽象的な絵画やオブジェが適度に配置され、如何にも未来志向といった感じです。

モノトーンで統一された空間は、実際よりも広いスペースに感じられるかもしれません。清潔感とオシャレな雰囲気が漂うその空間は、如何にも現代的でインパクトがあり、多くの人たちの注目を集めることは間違いないでしょう。
実際、そのような傾向の図書館が全国的に増えているように思います。

でも、わたしはそうした空間にむしろ違和感を感じます。
それは、現代という時代に象徴される慌しさや冷ややかさを感じてしまうからです。先述した映画のワンシーンのような落ち着きと温もりは、
残念ながらそこからは感じられないのです。

Desk&Lamp
Desk&Lamp

昨今、自治体の公共図書館は老朽化を向かえその対応策の中で、何らかの形で佐賀県武雄市や神奈川県海老名市の「ツタヤ図書館」が参考例として出され、多くの自治体で検討されることと思います。

先行の自治体では書籍の選定問題や民間が加わることで利益優先にならないかといった懸念など、運営面での問題点がクローズアップされていますが、わたしとしては図書館の建物外観や内装レイアウトなどにももっと関心を持ってほしいと感じています。
それは、運営面での問題は活動の中で解決が可能ですが、建物等については、一旦建設してしまうと費用の面などで修正が容易ではないからです。

個人的には、現代アート的な建物を新築するよりは、古い建物の良さを活かしたリニューアルで、伝統を維持した個性ある図書館が再スタートできればと思います。

更に、要望としては学習机の一人当たりのスペースに、もう少しゆとりがほしいです。わたしが利用する市の図書館などは学習スペースが狭い上、隣と肩が触れ合うほどの間隔で椅子が配置されていて圧迫感があります。それでも空席があればラッキーで、ほとんど満席で利用できないことがほとんどです。果たして、こうした環境のなか満足のいく学習がみなさんできているのでしょうか。

以前、県立図書館のアンケート調査のなかで利用状況に関する設問に対し、「行列のできるような図書館になったらもう通いたくない」という回答をしたことがありましたが、この件に関しては次回にいたします。

愛知県小牧市での新図書館「ツタヤ図書館」建設を巡る住民投票結果について

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ここ最近、全国の自治体で拡がりを見せている注目の「ツタヤ図書館」
そんな中、先日(10月9日)の朝日新聞に話題の「ツタヤ図書館」の記事がありました。
それによると、愛知県小牧市で計画されている新図書館建設を巡る住民投票の結果、反対票が賛成票を上回り「ツタヤ」との連携計画は一時停止になったとのことでした。

記事は、住民投票結果がどうしてそうなったのか、問題点は何だったのか、そして今後どうして行けばよいのかといったことに触れていました。

一方、佐賀県武雄市や神奈川県海老名市などでは既に「ツタヤ図書館」は開設されていて、一定の経済効果が出ている反面、いくつかの問題点も出ているという実施事例も紹介されています。

自治体がこの計画を推進したい最大の理由は、図書館建設コストの軽減と市街地の活性化というダブルの効果です。
それに対し、住民側が問題視するのは民間が関われば利益優先になりかねないという懸念からです。
現に、実施済の自治体でも、そうした懸念に該当する事例が出ているからです。

こうした議論を聞いていると思い出すのが「郵政民営化問題」です。
あの時も、賛成、反対の両者から上記のような意見が出ていましたが、強引に実施され現在に至っています。
果たして「郵政民営化問題」は結果的にどうだったのでしょうか。
その評価は、私たち利用者側の立場では評価できても、それは一方的な評価で全体としてどうだったのかは判りません。
何事も実施後の総括は、実施前の議論ほどされないのが世の常ですから。

それと同じことが、今回の「ツタヤ図書館」の問題でも言えるような気がします。
推進する側は実施することに意義があると考えているのではないでしょうか。
「スタートしてしまえばこっちのもの」的な考え方が見え隠れしてなりません。

いずれにしても、今回は反対票の方が多く、一時停止状態になったことは幸いです。
新聞記事は最後に、「『ツタヤ図書館』が提供するサービスと住民のニーズが合致するのか、市と住民が時間をかけて話し合うことが必要です」という慶応大学の糸賀雅児教授のコメントで結んでいますが、正直、それ以前に「図書館の在り方」について議論することの方が先決のように思うのですが...

<参考資料>
小牧市新図書館建設の住民投票結果(2015年10月9日朝日新聞朝刊37面より)
反対 32,352票
賛成 24,981票