近頃は、本棚が並ぶ通路に一定間隔に椅子を置いている書店をよく見かけるようになりました。
図書館などでは以前から見慣れた光景でしたが、書店が同じようなことをする目的とは果たして何なのでしょうか。
素人考えで言えば、一息ついてもらうというお客へのサービスか、あるいは、じっくりと目的の本を吟味してもらい購買につなげるためか。
いずれにしても、私としては反対です。
十分な通路の幅が確保されているならまだしも、現実は窮屈そのものでそこまで追いついていません。
かつて、街の商店街の小さな本屋さんでは立ち読み禁止が当たり前でした。
単なる立ち読みか、購入のための品定めとしてチョッと読んでいるのか、その辺りの見極めが微妙で難しかったのですが、明らかに長いと、店主の親父さんの視線が強烈になり、最終的には注意されることもあったほどです。
そんな時代に比べると、今はお客にとって大変恵まれた環境ですが、
だからと言ってこうした状況を「諸手を挙げて賛成」とも言い難いのが現実です。
一方で弊害がたくさんあるからです。
例えば、狭い通路で足を組んで読みふけるお客。
あるいは、当然の権利を行使するかの如く、長時間にわたり席を独占するお客など。
こうした身勝手な人たちにとっては快適かもしれませんが、多くのお客にとってはこうした行為は迷惑で不愉快に感じられます。
先日、書店のレジで興奮したお客が店員に荒い口調で何かを訴えかけているのを見かけました。
どうやら、通路の椅子に座っている客が出っ張っているので歩きづらいから注意してくれ、という苦情だったようです。
こうした、お客間の摩擦も既に現実問題化しているのです。
この手のサービスを実施する場合には、同時にルールやマナーを守るという前提がないと成功しないように思います。
残念ながら、外国に比べ治安やマナーが良いと言われているわが国でさえ、未だそのレベルなのです。
そのむかし、ハワイのオアフ島を中心にブックストアーを展開していたアメリカ資本の「ボーダーズ」というチェーン店がありました。
この店は書店内での立ち読み自由をウリにしていたのですが、実際には、通路に座りこんで読んでいる少年少女たちが目立っていました。
こうした光景を目の当たりにしたとき、正直驚きとともに、ある種の羨ましささえ覚えたものでしたが、
同時に自由の行き過ぎとも感じたものでした。
ある意味、こうした試みも電子書籍やネット販売に対抗してのサービスだったのでしょうが、それから何年もしないうちに、この「ボーダーズ」という書店は、日本で言う会社更生法の適用を受けハワイから姿を消していきました。
店内にカフェなどもあり、お洒落で落ち着いた雰囲気の私好みのお店でしたので、当時はとても残念に思いました。
立ち読み自由の方針が倒産の直接の要因とは決して思いませんが、書店はそこまでする必要はなかったのだと思います。
最近の日本の書店は、こうしたアメリカ方式を真似たのかどうかは分かりませんが、はっきり言って参考にしない方が良いと思います。
先述したように、マナーの良くない人たちがいる限り、書籍の汚れ、破損も多くなることが考えられますし、個人的にはそうした書店では購入したくないというのが正直な気持です。