女性トランペッター アンドレア・モティス「EMOTIONAL DANCE」に注目
2017.05.03 公開
2020.09.06 更新
<第2回>
アルバム「Emotional Dance エモーショナル・ダンス」
女性トランぺッター&シンガー、アンドレア・モティス
今回ご紹介するのはアンドレア・モティスという女性トランぺッター&シンガーです。
その多才さから女性チェット・ベイカーなんて例えられているようですが、こう言った例え方は、実のところわたしは好きではありません。
とは言うものの、そんなキャッチフレーズのお陰で目を惹き、アンドレア・モティスを知ることができたのですから情けない話ですが感謝もしているのです。
確かに、こうした誰もが知っている有名人に例えてもらうと、理解し易いし伝達力も増します。
宣伝としてはもっとも効果的手法だと思います。
反面、固定観念に縛られ
ただ、わたしが懸念するのは、例える側も例えられる側も互いに迷惑ではないかということです。
ご存知の通り、アーチスト、なかでもミュージシャンという人種は個性を大切にする人たちですから、真似されたり、例えられることに対しては、人一倍神経質で、忌み嫌うのではないかと想像できるからです。
でも、今回のケースは、例えられる側のチェット・ベイカーはすでに故人で、こうした事実を知る由もないでしょうし、アンドレア・モティスの方は、偉大なトランペッターに例えてもらったのですから光栄でしょう。
と想像できます。
では、本来のアルバム「Emotional Dance」評を始めることとします。
かつては、肺活量など体力的にサックスやトランペットは女性には難しいだろうといった風潮があったように思います。
昨今のレディースはそんな金管楽器をガンガン吹きまくっているようで、何とも逞しいの一言です。
今ではクラシックやジャズ界など音楽シーンで活躍している女性サックスプレイヤーや女性トランペッターは珍しい存在ではありません。
音楽シーンに限らず、スポーツ界はじめ今やどの分野でも女性の勢いが止まらない時代なんですね。
さて、今回紹介するアンドレア・モティスもそんな逞しい女性のひとりなんですが、ジャケット写真などを見る限りでは、身体も小柄で表情はまだまだあどけない。
それでいてあのパワーは一体どこからくるのか?
いずれにしても、彼女のように実力をともなった女性プレイヤーなら大いに歓迎です。
<アルバム収録曲>
01 He’s Funny That Way 4:50
02 I Didn’t Tell Them Why 2:30
03 Matilda 6:52
04 Chega De Saudade 5:48
05 If You Give Them More Than You Can 4:05
06 Never Will I Marry 3:19
07 Emotional Dance 4:33
08 You’d Be So Nice To Come Home To 4:23
09 La Gavina 4:46
10 Baby Girl 4:23
11 Save The Orangutan 4:00
12 I Remember You 4:32
13 Señor Blues 3:49
14 Louisiana O Els Camps De Coto 4:33
ビリー・ホリデイの十八番である「He’s Funny That Way」ではじまるこのアルバムは、ジャズのスタンダードナンバーと彼女のオリジナル曲で構成されています。
スタンダードもソツなくこなしますが、驚いたのは彼女の作曲のセンスなんです。
21才とは思えない大人の音楽を作曲できて、尚且つ背伸びすることなく演奏し歌いこなしています。
なかでも、7曲目のアルバムタイトル曲「Emotional Dance」は「これ、彼女のオリジナルなの?」と疑いたくなるような完成度の高い曲で印象的です。
スタンダードの中ではビクター・シャーツィンガーとジョニー・マーサーの名曲
「I Remember You」が12曲目に入っていますが、これがイチ押しのお薦めです。
なるほど、IMPULSE(インパルス)が今一番期待する新星であることが、このアルバムを聴くと納得できます。
どうやら、アンドレア・モティスは単なるカワイ子ちゃんプレイヤーに留まず、持前の洗練されたセンスと確かな実力を兼ね備えた逸材であることは確かなようです。
(アルバム評)